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狂言初体験:「東西狂言の会」@三鷹市公会堂

 伝統芸能系の舞台は、歌舞伎以外なにも観たことがなかったのですが、加入している生協の注文カタログにこの公演が載っていたので、チケット買って出かけてきました。野村家(和泉流)と茂山家(大蔵流)の東西競演。
 日本人ならたぶん誰でも知っている「附子(ぶす)」、フランスのファルス(笑劇)を翻案した新作の(といっても初演は昭和28年!)「濯ぎ川(すすぎがわ)」、そして、お囃子のリズム感についついのせられて大笑いの「蝸牛(かぎゅう)」の3曲。冒頭に野村萬斎さんの解説が20分ほどあって、初心者でも参入障壁なし。とても楽しくすごして帰ってきました。

 以下、低音ボイスが魅力の萬斎さんの解説から。(狂言初体験の自分用のメモなので、ご存じの方にとっては多分おなじみのことばかり。)

名乗り
 人物が登場して「名乗り」というのをするのですが、いわゆる自己紹介的に“どこどこの誰々です”という風にするのではなく「このあたりの者でござる」と申し述べるだけ。「名乗り」といいながら名乗ってません(笑)。これは、狂言に登場する人物、ひいてはテーマの普遍性を象徴するもののようです。つまり、「どこにでもいる人」のお話ということ。
 ちなみに、ちょっと前に行われたイタリア各地での公演でも「このあたりの者でござる」と名乗ってきたのだとか。

太郎冠者・次郎冠者
 太郎冠者は好奇心旺盛でイタズラ好き、自分の欲求に対して素直。これに対して次郎冠者はもう少し冷静というか融通がきかないというか、まじめな感じ(でも結局…)。(わが家にも同じようなコンビがいるような。茶太郎冠者は、物欲、金銭欲はあまり旺盛ではありませんが、新婚当時、お土産にもらって大事にとってあったチョコレートを、ちょっと留守にした間に食べ尽くされて、私が泣いて怒ったことがありました。)

砂糖の形状
 言われてみればなるほどそりゃそうだ、と思うのが、「附子(=毒)」だと言われる壺の中身のお砂糖のこと。当時はどろどろとした水飴のような液体だったのだそうで。海外公演では、いちいち説明もしていられないこともあって、honey(ハチミツ)にしちゃうんだそうです。
 小学校(中学校だったかも)のときの国語の教科書にこのお話がシナリオの形で載っていましたが、附子の正体のお砂糖のことを、本日この話を聞くまでずっと精白糖だと思ってきました。説明を聞いて液体だという前提のもとに鑑賞したら、壺を空にするまでなめてしまった、という状況がストンと腑に落ちました。こんな些細なことも——些細だからこそ——リアリティに影響を及ぼすのですね。

「わわしい」
 「濯ぎ川」に登場する主人公の妻・姑(妻の母)は「わわしい」という言葉で表されていますが、ここでの使われ方は、本来の「わわしい」とはニュアンスが違うとのこと。「わわしい」は、「たくましい」というか、夫を尻に敷きながら、同時に尻をたたいて"cheer up"する、といったような、肯定的な強さを表す言葉なのだそうです。
 鑑賞していても、「濯ぎ川」の(まあ、姑は当然としても)妻にはそういった愛情めいたものは感じられず、少し意地悪というか自分本位なだけのような感じがしました。そんなところが、他の曲と違って、手放しで「あー、面白かったー」と笑っていられるような鑑賞後感にならない原因なのでしょうね。そのあたりに、フランスの小噺の翻案という出自も見えてくるような気がします。フランス映画の単純なハッピーエンドにはならない、ちょっと意地悪な感じも、あれはあれでキライじゃありませんが。

山伏
 「蝸牛」に太郎冠者をからかって悪のりする山伏が出てきます。現存する狂言254曲のうち山伏が登場するのはわずか8曲だそうですが、人気曲が多いそうです。

場面転換・動かないものの扱い
 狂言では、「止まって動かないもの」=「存在しないもの」なのだそうです。「蝸牛」でも、藪の中で山伏が寝てしまったところへ、主人と太郎冠者がやってきますが、山伏が寝っ転がっているすぐ横で、主人のお屋敷の部屋の中での、主従の会話が展開されます。でも、山伏はいないことになっているんですね。


 今回は、蝸牛の山伏を萬斎さんが演じていました。
 冒頭の解説の中で、最後のお囃子の部分「雨も風もふかぬに、でざかま打ち割ろう」を「リピートアフターミー」と言われるまま、ホールの観客全員で大合唱したのですが、曲の中では、この太郎冠者のお囃子に山伏の「でんでん むしむし でんでん むっしむしー」という合いの手が入ってきます。
 この合いの手が、かなり大げさでノリノリな感じで、オーバーアクション気味な踊りつき。観客の大部分は年配の人だった中、前のほうの席に小さなお子さんが2人ほど座っていたようで、この子たち、もう可笑しくてうれしくてたまらないという感じで、キャッキャ、キャッキャと大喜びしていました。私たちも大笑い。山伏さんも、かわいらしい笑い声を聞いてさらに張り切って悪のり、という感じ。私は見たことがないのですが、教育テレビの「にほんごであそぼ」がこんな感じだったのでしょうね。

 初めての狂言に茶太郎も結構はまったようで、帰りのバス&電車の中で今日の口まね各種を披露してくれました。バスの中でやると白い目で見られるのでみなさんそれはやめましょう、と注意を受けていたのに。茶太郎冠者よ、はずかしいから人前ではやめて。「やるまいぞ、やるまいぞ。」
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by thebrandywine | 2009-10-04 22:08 | みる・きく

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